谷口さんは、クラリネットをやめようか、と思ったことはありませんか? 自分は本当にクラリネットでメシが食っていけるのか、と迷ったことはありませんか? お答え聞かせていただけたら幸いです。 <大学4年>
週に一度くらいはやめたくなります(笑)。 世界的、歴史的なプレイヤーの名演に出会う度に、現時点での自分とのあまりの差に打ちのめされます。 しかし真剣に「やめようか」と思ったことは一度もありません。音楽家になった以上、自分の音楽をどこまで高められるか一生をかけてやっていく覚悟ですから。やらなければいけないこと、埋めなければいけない差が目の前にあるからこそ、少しずつでも歩を進めて行かなければなりません。立ち止まったり振り返ったりしている暇はないのです。そしてここでやめてしまったら今まで積み重ねてきたものがまったくのムダになってしまいます。というわけで年々ますますやめられなくなってきました。 もうひとつジャズクラリネットの状況も大きなモチベーションになりました。今僕がやめたら本当に日本のジャズクラリネットは途絶えてしまうんじゃないかと。 「メシが食っていけるのか」・・・あなたがある程度事情通であれば、これは「昨今では流行らないジャズクラリネットで・・・」という意味になります。 それとも一般に音楽家という地に足がついていないような稼業は大変でしょうというようなニュアンスでしょうか。ま、いずれにしても毎日不安ですよ(笑)。迷ったことがないというとウソになります。だって好きなクラリネットを楽しく吹いて、生活が成り立っちゃう・・・不思議なことですよねぇ。 きれいごとと思われるかもしれませんが、仮に「メシ」を食えなくてもクラリネットは吹いていたい、「メシ」なんてものは結果として後からついてくるものだと思っています。実際に駆け出しのころはジャズクラリネット奏者として仕事らしい仕事はありませんでした。が、仕事をさがすことよりも力をつけることに重点を置いてきました。今でもそれを心がけています。力をつけていくうちに次第に仕事が生じてくる、優れたアーチストがいればそこに仕事が発生する・・・芸&芸術の世界なんてそんなものではないでしょうか。 【谷口英治】
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