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11月4日(水)
高速道路のサービスエリアの何気ないうどんが、かなり美味い…九州入りを実感する瞬間である。と同時に今回のツアーもまた食が充実しているであろうことを予感し、うっとりとした目つきで「どんうー」をすする谷口英治セクステット一行であった。

旅の初日は闘いである。バンマス兼ツアーコンダクターの僕は集合時刻の一時間前には羽田空港に到着し一行(右近ちゃん、池っち、ヅカさん、ジャンボさん、ノブさん、それに僕)のチェックインを行う。専用コンテナを使用する楽器、機内持ち込みで座席を使用する楽器などあるため、空港職員が状況を理解しきちんと申し渡しができていないとこのプロセスでしばしばトラブルが発生する。今回も事前の綿密な手配と確認を行っていたにもかかわらずチケットが手に渡るまでに25分かかった。しかしそんなことでいちいちキレているようじゃあツアコンは務まらない。ともかく、集合時刻になりメンバーを点呼、楽器の梱包作業、搭乗…ANA25便は無事に離陸し午後2時半福岡空港に着陸。
メンバー点呼、楽器、荷物の無事を確認すると、空港前のバジェットレンタカーでハイエースを借受け、地元の支援者よりドラムセット、ベースアンプ、譜面台、みかんを借受け(あ、みかんは差し入れね)、佐賀市へ向け出発。都市高速を抜け九州自動車道に入るとようやく順調な旅の滑り出しに一安心。
ほっとすると、昼食のタイミングを逸し腹が減っていたことを思い出すメンバー…九州自動車道は基山(きやま)PAでひとやすみ、肉うどんに感動していたところである、ふぅ〜。

午後4時半、佐賀市大財のジャズ喫茶「シネマテーク」に到着した一行はマスターの西村さんと力を合わせて、あっという間に店内をライブ仕様に変身させる。サウンドチェックがてら今回のツアーに書き下ろした新アレンジ2曲をちゃちゃちゃっとお稽古。このあたりのチームワークの良さはさすがレギュラーグループである。本番前の消耗が少なくてありがたい。

午後8時、ツアーの最初のステージが始まった。店内は遠くは佐世保、北九州からも駆けつけてくれたお客さんでいっぱいだ。初めて生で体験するセクステットサウンドに会場が興奮に包まれるのが伝わってくる。
メンバーの演奏も熱を帯びてくる…バンマス冥利につきる瞬間だ。地元のジャズ通の方々が「わたしらでお金出し合うけん、また来年も来てくださーい」とメンバーひとりひとりの手を強く握ってくれた。

SN3E0085_2.jpg『がばいばあちゃん』の里での初ライブ成功を祝って、ホテルのそばの居酒屋で、とりあえず初日乾杯。




11月5日(木)
ツアコン谷口としては、ホテルチェックアウトを交渉のすえ午前11時まで延ばしたものの、それでも現場入りまでの有り余る時間をどのようにつぶそうかと昨日から頭をなやませていたのだが、ホテルのロビーに貼ってあるポスターを見て「そうだ邪馬台国に行こう!」とセクステット慰安遠足を企画。うららかな秋の日差しの中、田舎道をのんびり走ること小一時間、吉野ヶ里(よしのがり)歴史公園に到着。その絶大な規模に話題騒然となった吉野ケ里遺跡あと(遺跡あと、て妙な表現だけど)につくられた弥生時代の集落を再現した公園は想像以上に広大で、全部まわると二時間はかかるらしい。もちろん全部はまわらなかったが、ススキが風にそよぎ足もとをトノサマバッタが飛び交う園内をそぞろ歩くのは旅中の運動不足解消に「ちりばつ」のウォーキングエクササイズだし、ついでにちょっとお勉強にもなっちゃう…うーん谷口バンドらしいワンシーンではないか。それにしても、遠足の小学生に混ざって闊歩するオッサン集団はかなりあやしげではあった。

091105_1219~0001.jpg弥生人と同化を試みるノブさん(縄文人っぽくね?)

091105_1202~0001_2.jpg物見櫓から弥生集落を見渡す右近ちゃん


いまやジャズ界一弥生時代に詳しくなった谷口セクステット、今晩の会場はジャズ喫茶「古処」。福岡県は朝倉市、山あいの峠にある骨董ギャラリーのような趣のすてきなお店である。ドーム状のウッディな造りの店内には二階桟敷席、さらには奥座敷まであり、そこに60名近いお客が詰めかけた。その熱気にあおられ、のっけからハイボルテージなステージを展開。ツアー二日目にして面々が見せる神懸かりなプレーは瞠目すべきものがあった。神懸かったのは裏の霊園のせい?弥生遺跡のせい?いやいやジャズを心から愛する「古処」のお客さんのおかげだ。そんなみなさんと終演後店内で懇親会に突入。モツ料理で白波のロックをぐびっと…至福のひとときである。それにしてもこのモツうんめ~なと思ったら地域名物の馬モツなのだとか。明日の「チェロキー」はさらに突っ走るかも。





11月6日(金)
今日は昼、夜のダブルヘッダーである。まずは北九州市若松区の市立高須中学校創立20周年記念演奏会に出演。そのセッティング~リハーサル中にとんでもないアクシデントに見舞われた。組み立てて、さてとリードをつけよかなと思ってスタンドに立てた僕のシュヴェンク&セゲルケ model 1000(あ、要するにクラリネットです)が、舞台から真っ逆さまに落下したのだ!(原因はやや建てつけのあまかったひな壇の揺れによると思われるが、不用意にそういう場所に楽器を置いた僕が悪い)。落下の瞬間を目撃したヅカさんによると「時計の針のようにゆっくりと弧を描きながら6時の方向に舞台下に消えていった」そうだ(ウウッ)。まあそういうタイミングだったためにマウスピースキャップを装着しておらず、楽器を拾い上げてみると、僕の周りでは幻の一本と騒がれたアレキサンダーヴィルシャー40B(要するにマウスピース)の先端部分がばっくりと欠けてしまっていた。
しかし、しかし、奇跡的に楽器の方は無傷。これは奇跡としか言いようがない。思うに、真っ逆さまに落ちたためにマウスピースから着地し、そこで衝撃を吸収したおかげで楽器へのダメージが少なかったのだ。歴戦をともにくぐり抜けてきた40Bがまさに身を挺して楽器を守ってくれたとしか思えない。本番はスペアの40B(平均的バージョン)でしのいだが、僕の心理的ダメージはそうとうなものだったらしく、そのステージでの僕のしゃべりは中学生相手にめちゃめちゃハイテンションで生徒たちは大喜び、自分で言うのもなんだが、20周年記念演奏会にふさわしいすばらしいコンサートになり無事大役を果たす。

旅の後半の万全を期して、石森管楽器に連絡して、先日谷尻忍さんが選定した3本の40Bを次の公演地に送ってもらうことにした。谷尻さんからは温かい「弔辞」メールをいただいた。

夜は同校PTAの祝賀パーティーでの演奏。代役の40Bがなかなかがんばってくれた。今日は一日かなりタイトなスケジュールだったので、僕もメンバーもホテルの朝食をとったきりまともに食事ができていなかったのだが、谷口バンドおっかけのネコさん(北九州のかただけどときどき東京まで来てくれる)が、僕や右近ちゃんの大好物シロヤのサニーパン(練乳入りフランスパン)他を大量に差し入れてくれたおかげで、メンバー一同なんとかしのぐことができた。ネコさん本当にありがとう!

はらぺこ、へとへとで若戸大橋の見えるホテルにたどり着いた後、明日の公演のスポンサー品原氏が和風飲み処「茶小屋」につれていってくれた。「田舎料理で申し訳ないです」と品原さんはおっしゃるが、なんのなんの、ここんちの料理はどれも絶品! まずは白身を中心にした刺身もりのうまさにメンバー一同驚嘆。福岡独特の甘い刺身醤油が白身のうまさを引き立てることを発見し納得。鶏のからあげ、手羽塩焼き、揚げ出し豆腐、鯛のあら煮…夜の暴飲暴食はつつしみたい年頃の面々ではあるが、今日はほんとにがんばったし、いいよね。鯛茶漬け、ジャンボさんのリクエストの鯛あら煮の煮汁をかけまわしたご飯まで、みんなものすごい勢いでがっついた。おかげで心身の疲れが一気に吹き飛んだ。



11月7日(土)
今日も晴天、シャツ一枚でも汗ばむほどの陽気だ。昨晩の暴飲暴食を反省、朝食を抜いて午前中若松の街を 歩いた。とりあえず若松港岸壁まで行ってみた。真っ青な秋空と真っ赤な若戸大橋のコントラストがシルクスクリーンの絵のようだ。若戸大橋は洞海湾を挟む若松区と戸畑区を結ぶ吊り橋でゴールデンゲートブリッジをぐぐぐぐっと小さくしたようなルックスである。
橋がかかる海峡はとくに狭くなっていて対岸までの距離は400メートルほどか。叫べば声が届きそうなくらい戸畑の街は間近に見える。戸畑に暮らした高校時代、自転車で橋を渡り若松の図書館で受験勉強していた時期があった。そのときは何の感慨も覚えなかった景色が、あれから二十余年いろいろな街を見てきた大人の目を十分に満足させてくれた。

091107_1120~0001.jpg東洋の金門橋、若戸大橋

本日の演奏会場は遠賀川のライブハウス「ドラム館」。今回のツアーで地元北九州からもっとも近い場所ということもあり、ファン、同級生、先輩後輩、親戚、楽器屋さん、今回ライブを組めなかったお店の店主までがおしかけ満員御礼。セクステットは少年期からの夢を育み実現させ今や最良の状態にある、いわば僕の成長と(そう言うことを許されるならば→)成功の証であり、お世話になった方々にその「ご報告」ができて本当に嬉しかった。
もうひとつ。さすがはドラム館、ジャズドラムの名手でもあるマスターが手塩にかけたセットの状態が非常に良く、ご機嫌なノブさんのプレイがいつにもまして冴え渡っていたことも付け加えておこう。


11月8日(日)
福岡県田川市へ。田川の友達は何人かいたが(たとえば武田良太議員は中高時代の同級生)訪れるのは初めてだ。昼過ぎに会場の「ダイヤモンドムーン」に到着すると田川ジャズクラブの永野さんとアシスタントのリョーコさんが出迎えてくれる。そもそも今回のツアーは田川ジャズクラブ十周年にセクステットをよべないか、という永野さんの熱意からスタートしたものである。その熱意たるや、セクステットを聴くためにわざわざ新幹線に乗って上京されるほど。このツアーの他の公演地もほとんど永野さんがコーディネートしてくださった。昼食後、みんなで石炭歴史博物館へ行き三井炭坑の歴史を勉強する。僕はもともと同じ福岡県の一地域として関心があったわけだが、メンバー一同の予想外の食いつきには感銘すら覚えた。各々がそれぞれの思いでもって熱心に展示に見入っていた。こういう時間がバンド仲間と共有できるのも旅の楽しみのひとつである。

091108_1518~0002.jpgトロッコの前にたたずむヅカさんとウコン ちゃん…あやしい


ライブ会場の「ダイヤモンドムーン」は街の中央を流れる英彦山川の脇の古いガレージを改造したようなつくりで、天井が低めの煤けたがらんとした空間にステージとカウンターが造り付けてあり、手作業でベンチやパイプ椅子をボンボンっとならべるという…実に飾り気の無いホールである。どことなくニューオリンズのプリザベーションホールを思い起こさせるものがある。入り口の外両脇にバーカウンターとおでんやラーメンの屋台が控えているのも珍しく、なんだか祭に来た気分だ。主催者サイドの「こんな場所ですみません」な感じとうらはらに、メンバーはといえば、めったにないこういうファンキーな環境に「田川に来たなぁ」という旅愁を覚えワクワクしてしまうのだった。
本番が始まりステージのライトを点け客席の電灯を落とすと、くらやみにびっしりとお客さんが詰めた様はますますプリザベーションホールである。心なしか各人のソロもいつになくファンキーにこぶしがまわる。シング・シング・シングのクラソロで、なぜか昔の日活映画の気分になった僕の脳裏に「お、い、 ら、は、ドラッマー♩」のフレーズが天から降りてきて、そうかと思うと田川に負けず気が荒い僕の故郷小倉の無法松が飛び出し、さらに「ダイヤモンドムーン」に敬意を表し炭坑節が飛び出した。そのころにはノブさんのタムタムソロもすっかり祭り囃子風に変身(笑)お客さんもメンバーも夜が更けるのも忘れて熱
狂した。


11月9日(月)
今日もよい天気、暑い。九州自動車道で北九州へ戻り進路を熊本方面へ、今回もっとも長い距離の移動を走る。二時間弱で熊本に到着。時間をつぶすべくツアコン谷口は水前寺公園へ一行をいざなう。熊本藩初代藩主細川忠利が開いたこの庭園には僕は小学校の修学旅行以来およそ三十年ぶり、懐かしさのあまりこのコースをチョイスしたのだが・・・庭園自体はすばらしいものの周囲のビルが丸見えで、とくに名物富士山の脇に役
所のパラボナアンテナがのぞいてたりして興ざめなこ とこの上ない。一行は気をとりなおし運動不足解消もかねて「365歩のマーチ」を歌いながら園内をそぞろ歩く(水前寺清子さん、あとで調べてみたら熊本時代の後、洗足学園中高のご出身なんだって!)。鯉にエサをやったり、池の底で巨大なスッポンが交尾をしているのを発見して「めでたい、めでたい」と騒いだり、なんとなくアンニュイなみやげもの屋の「終わっちゃってる」感にツッコミを入れたり…何でも楽しめてしまうのが、このメンバーのすごいところである。
でもやっぱ熊本城にすべきだったかな。ツアコン谷口、ちょっと失敗、である。

091109_1441~0001.jpg鯉のエサやりに夢中のジャンボさん
091109_1340~0001.jpg観光地のお決まりでしょ(イケっちとノブさん)


演奏会場CIB(キーブ)は熊本市内の繁華街のど真ん中。これまで数日間のどかなエリアばかりまわってきた一行は、都会の慌ただしさに戸惑い気味(なんでやねん、笑)。広々とした店内は通常テーブルとアリーナ席があり、グランドピアノ、PAも完備、東京でもめったにないゴージャスなお店である。
午後7時半 「サントリーウイスキー・ハイボールとスイングの夜」スタート。
かぶりつきのお客さんは2005年のクラフェス以来のファンという同業者(地元のプロ演奏家)を中心に若い世代のテンションの高いリスナーが多くライブを盛り上げてくれた。そして何よりもマスターの「この企画をやりたかった」という思いが嬉しかった。

CIMG2643.jpg熊本のクラリネット美女(同業者)と記念撮影


11月10日(火)
ツアー日程はじめての雨天、しかもかなりの本降りの中を阿蘇へ向けて出発。しかし雨が降ろうとヤリが降ろうとハッピーな一行、車内BGMはなぜか「ポール・モーリア・ヒット集」(爆笑)…それぞれが若かりし〜幼かりし日々を偲び、眼を潤ませつつ山道を揺ら
れる。せっかくなので寄り道して阿蘇山火口まで足をのばしてみるも、火口駐車場まで来た時には傘もさせない激しい風雨に。一行は下車をあきらめ、未練を残しつつ下山。秋晴れの下の大パノラマは望めなかったが、雨に煙る紅葉や濡れそぼつ牧場の牛馬…これはこれで一興、ということで。
ツアー最後のライブ会場は阿蘇郡小国町のウッディカフェ「鉾杉(ほこすぎ)」。ライブ前に小国中学校の吹奏楽部員を招待しミニライブとクリニックを行う。

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こうしたボランティアもいとわずに熱い指導をしてくれるセクステット面々には頭が下がる思いである。僕らにとっても子供たちにとって忘れられない思い出となるであろう。午後7時半ライブ開始。冷たい雨にもかかわらず、阿蘇ジャズクラブ会員を中心に店内いっぱいのお客さんが熱心に耳を傾けてくれた。かぶりつきの若いお客の「あ、ひょっとしてA列車じゃない?」「すげぇ!」「かっこいい!」という素直なリアクションが嬉しかった。アンコール「パリの四月」のお約束「ワン・モア・タイム!」に応えるリフレインも、ツアーの締めくくりにふさわしい熱を帯びて何度も何度も繰り返された。こんな楽しい日々よ永遠に続けとばかりに。

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終演後「鉾杉」別室でお客も交え打ち上げ。鉾杉マスター手ずからの美味しい美味しい「自然食」に加え、自分たちで調達してきた馬刺、ツアー途中でみなさんからいただいた焼酎の数々…ツアーの思い出いっぱいの千秋楽大打ち上げとなった。

11月11日(水)
熊本空港へ向かう車中、みんなでツアーを振り返った。羽田に集合したのが遠い昔のようにも思え、同時にあっと言う間に過ぎた楽しいひとときだったようにも感じる。たくさんの思い出と友人を得た充実した旅であり、セクステットのサウンドもさらに一皮むけたような気がする。本番を重ねることで我々の音はまだまだ上に行ける!そう実感できた貴重な一週間であった。

今回のツアーの生みの親である田川ジャズクラブの永野さん、ツアーの核となる高須中学周年記念演奏を実現させた田中先生、遠賀ライブのスポンサー品原局長、各地ジャズクラブの代表およびスタッフ各位、各店のマスターおよびスタッフ各位、窮地を救ってくれ
た石森管楽器、そしてなにより貴重な時間を割いてライブに駆けつけてくれた各地のお客様…谷口英治セクステットメンバー心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。そして、ぜひ、来年もみなさんにお目にかかりたいと思っております!!

谷口英治

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